着物には留袖、振袖、訪問着など様々な種類があり、それぞれに格式があります。
着物はその格式に合わせて、着るシーンや着こなしを変える必要があります。
この記事では、女性の中でも最も格式が高いとされている留袖の特徴と、着付けに必要なもの、そして留袖を着るときのマナーについてご紹介します。
目次
留袖(とめそで)とは女性が着用する着物の中でも最も格式が高い「第一礼装」です。
留袖の特徴は以下の3点です。
絵羽模様(えばもよう)とは、縫い目をまたいだ模様で、絵柄が一枚につながっている物のことを言い、格の高い着物に使われます。
さらに、模様自体も吉祥文様や有職文様など、おめでたく格調が高いものが使われます。
また、模様は裾部分にのみあるので、上半身は無地ですっきりとした印象があります。
比翼仕立(ひよくじたて)とは、2枚の着物を重ねて着ているように見せるために、着物の袖口、振り、衿、裾回し部分だけを二重にした仕立て方法です。
「祝いを重ねる」という意味があるため、おめでたいシーンに使われる留袖に使われているといわれています。
それだけではなく、重ね着をしているように見える分、他の着物よりも見た目に高級感や重厚感が出ます。
家紋を付ける場所と数は留袖の種類によって異なります。
黒留袖は五つ紋と呼ばれ、背縫いの中央に一つ、両外袖と両胸元に一つずつの合計五つの家紋が配置されます。
一方色留袖の場合は、背縫いの中央に一つ、両外袖に一つずつの計三つ、また、裾模様風の訪問着には背縫いの部分に一つ入ります。
家紋の数が多いほど、より格式の高い装いとなります。
留袖には黒留袖と色留袖の2種類があります。
簡単に言えば、黒留袖は黒地で色留袖は黒以外の留袖ですが、そのほかにも違いがあります。
黒留袖は、既婚女性の第一礼装で、主に結婚式や披露宴の際に、新郎新婦の母親・祖母・叔母、姉妹などの親族が着用します。
黒留袖には浜ちりめんや単語ちりめんなどの高級なちりめんが使われているためマットな見た目になります。
また先ほども書いた通り、背縫いの中央に一つ、両外袖と両胸元に一つずつの合計五つの家紋が配置されます。
色留袖は礼装・準礼装用のお着物で、結婚式や披露宴に出席する親族女性の礼装用としてだけではなく、華やかなパーティーなどでも着ることができます。
かつては黒留袖と同じように既婚女性のみの正装とされていましたが、現在では未婚既婚を問わず着用できます。
色留袖を使うシーンは紋の数で使い分けましょう。
五つ紋は第一礼装となり、黒留袖と同じ格なので新郎新婦の親族が着るのに適しています。
三つ紋と一つ紋は準礼装として、親戚の結婚披露宴やパーティーなどに気軽に着用できます。
留袖の着付けは基本的には他の着物(訪問着や振袖)とさほど変わらず、必要なものも多くは異なりません。
ただ、礼装ですので、格式が高い小物を使う必要があります。
表に見えない長じゅばんや伊達締めなどは普段の着物で使っているもの出構いませんが、そのほかの帯・帯上げ・帯締めなどは礼装用のものが着物屋さんで購入して着付けをしましょう。
礼装の小物類は基本的に白・金・銀を使ったものになります。
袋帯とは以下の二点を満たした帯のことです。
留袖の場合は長く、重量感のある袋帯を二重太鼓という結び方で締めます。
草履も他と同じく白金銀色のものを使います。
かかとが高いほど格式が高いといわれているので、2~3段の底が厚めになっているものがよいでしょう。
着付け以外で必要なものも、基本的に白色・金色・銀色で揃えましょう。
「祝儀扇」とも呼ばれる留袖の帯に差す「扇」のことを指します。骨が黒塗りで、金、もしくは銀の地紙のものが一般的です。ほかには白地に金箔押し、銀箔押しのものなどもあります。
末広は儀式用のため、広げて使用はしません。通常は体の左側の帯に差し、集合写真や、お客様のお出迎えやお見送りなどの際には右手に持ち左手を添えます。
着物を着るときのマナーは色々なものがあります。
その中でも、留袖は格式が高く、しかも大切な親族の結婚式で着る着物なので、特に上品なしぐさを心がける必要があります。
ここでは、特に留袖におけるマナーをご説明します。
留袖は格式が高い着物であるとお伝えしましたが、いつでも格式の高い着物を着ればいいというわけではありません。
例えば、結婚式において一番格式が高いのは新郎新婦の近しい親族になるので、それ以外の友人が第一礼装の黒留袖を着てしまっては失礼にあたります。
また、新郎新婦それぞれの母親も、どちらかが黒留袖を着て、どちらかが着ていないということになると、着物の格式だけでいうと格差が生まれてしまうということになってしまいます。
ですので、結婚式に留袖を着ていく場合は、念のために周りの人や相手方の親族に相談しておくのが無難でしょう。
結婚式で白いドレスを着るとウェディングドレスと被ってしまい、失礼にあたるのでマナー違反といわれていますよね。
実は、着物に関して言えば、白地の着物はマナー違反にはなりません。
しかし、一般的にはやはり「白は花嫁の色」のイメージが強くあります。
色留袖は薄ピンク、薄黄色など華やかで明るい印象を与えつつも、白以外のものが多くあります。
結婚式で着るのであれば、白色は避けて色がついたものを選ぶのが無難でしょう。
ドレスであれば、正式な場面だとアクセサリーも派手になることが多いですが、和装は違います。
コーディネートの中心が留袖となり、邪魔をしないような全身のコーディネートをしましょう。
具体的には、結婚指輪や小さな真珠のイヤリング以外のアクセサリーは控えて、ネイルも自爪のままかベージュのワントーンくらいに抑えておくのがおすすめです。
いかがでしょうか?
留袖は一生の中でも何度も着る機会があるわけではありません。
親御さんから大切な留袖を受け継いだ方も、新しく購入する方も、是非数少ない留袖を着る機会に正しく美しく着こなしてくださいね。