着物の「紋(もん)」は、数や種類で格が変わるもの。と様々なところで説明されていますが、どんな紋があり、どんな違いがあるのか、着物初心者にとってよくわからないことの一つです。
ここでは、その着物の「紋」の種類や違い、紋の位置など様々なことをご紹介します。
目次
着物の紋を一言で表すなら「家紋(かもん)」のことです。
家紋は、家系・血統・地位を表すために用いられてきたもので、その数は4,000種類もあると言われています。
ただ、家紋のデザインベースとなるモチーフは300~400種類ほどで、草花の植物、建物や景色、いきもの、自然、人物、道具、そして幾何学模様など、様々なものがあります。
ただ現代においては、自分の家の家紋がわからない人もおり、必ずしも家紋を使わないといけないわけではありません。
通紋という「誰でも利用できる紋」があり、家紋がなくても通紋を使えば問題ありません。
家紋は、家系や血筋を表す紋といっても、家紋を江戸時代以前は貴族や氏族が主に利用していました。
ただ江戸時代になると、一般庶民でも家紋を使うようになり、特定の氏族で専有できなくなった紋がでてきました。これが「通紋(つうもん)(とおりもん)」です。
■五三桐の紋
画像:紋一覧紹介サイトより
■蔦の紋
画像:紋一覧紹介サイトより
このような紋は、誰でも利用できことから、レンタル店で扱っている着物でも利用されています。
通紋はこの2種類以外にもたくさんあるので興味がある方は下記サイトを御覧ください。
一つの紋をとっても、表現方法があります。
この表現方法でも着物の格に違いがでて、格の順に「日向紋>中陰紋>陰紋」となります。
画像:着物倶楽部
紋の型全てを白地にして、黒や着物の地色で模様をつけます。(白抜きしたイメージ)
白い部分が多く、明るいことから陽紋とも呼ばれることもあります。
画像:着物倶楽部
紋の型を太く白でなぞり、模様部分の描写は省かれます。
画像:着物倶楽部
紋の輪郭部分(型と柄)のみを白でなぞったものです。
紋の入れ方(技法)でも名称が変わり、格やイメージも大きく変わります。
格の高い順に「染め抜き紋>縫い紋>貼り付け紋」となっています。
画像:着物倶楽部
一番格の高い紋の入れ方になります。紋の型を作り、紋の白く残るところを染め抜いて、中に柄を描き足します。
画像:着物倶楽部
刺繍で縫い付ける紋なので、縫い紋と呼ばれています。
この縫い紋は、線を刺繍で表現するため陰紋になります。
刺繍でも染めでもない紋であり、一言でいうとアップリケです。
紋を描いた生地を上から貼り合わせるので、一時的に紋を変える時や、紋を変えたい時などに利用します。
画像:着物倶楽部
染め上がった着物の紋が入る部分をあらかじめ白い丸で抜いてある状態のことです。
この石持ち入れ紋は、後から紋を描き足すことができるので、描き紋とも言われています。
また百貨店等で見かける黒留袖などでよく見かけます。
着物の紋を付ける位置は、「背紋」1つ「袖紋」2つ「前紋」2つと決まっています。
背紋は、背縫い上、紋上(もんがみ)から衿付けまで1寸5分(約5.5センチ)の位置に紋をつけます。
袖紋は、袖紋は袖巾の中央、紋上から袖山まで2寸(約7.5センチ)の位置に紋をつけます。
前紋(抱紋)は、前身頃の中心、紋上から肩山まで4寸(約15センチ)の位置に紋をつけます。
紋の大きさに決まりはありません。
ただ一般的に、女性は直径5分5厘(約2センチ)、男性は1寸(約3.8センチ)となっています。
また、女児は女性と同サイズで直径5分5厘(約2センチ)、男児は8分(約3センンチ)が標準となっています。
ただし、しゃれ紋の大きさも決まりごとはなく、標準的なサイズというものもありません。
まず紋の数は、1つ、3つ、5つの3パターンが原則で、多ければ良いというわけではありません。
画像:お仕立て工房れじぇんど
この通り、格式の高い順に「五つ紋>三つ紋>一つ紋」となっています。
ただ、全ての着物で紋をつければ良いというわけでもなく、その着物の格に適した紋の付け方があります。
五つ紋は、「背紋」1つ「袖紋」2つ「前紋」2つに紋がはいり、最高位の格です。
フォーマルな場に着物で出席する場合、必ず五つ紋の着物が求められます。
ただ、格の低い訪問着や色無地などに五つ紋を付けても、格が高い着物にならないので注意が必要です。
また、紋の入れ方は染め抜きが基本です。
黒留袖・喪服・色留袖…等
五つ紋につぐ格の高さを持つのが三つ紋で、「背紋」1つ「袖紋」2つ紋が入ります。
ただ、五つ紋のように格式の高い場所では利用できず、少しフォーマルな場で利用できる。訪問着と同じく略礼装として利用することが一般的です。
紋の入れ方は、染め抜きと縫いのどちらでも良いですが、高級感を出すのであれば染め抜きです。
色留袖・訪問着…等
紋付き着物の中で最も格の低いのが一つ紋です。
一つ紋は「背紋」1つのみですが、紋なし着物と比べると、格が高い着物のような印象を与えます。
紋の入れ方は、染め抜きと縫いのどちらでも良いですが、高級感を出すのであれば染め抜きです。
訪問着・色無地…等
着物のレンタル店で、紋つき着物を扱っている場合、基本的に「通紋」の着物となります。
しゃれ紋の着物も扱っているお店もあるかもしれませんが、黒留袖や色留袖(五つ紋)などのレンタルを考える場合、お店にお問い合わせいただくのを推奨いたします。
また京都着物レンタル咲く都では、紋つき着物は扱っていませんが、持ち込みによる着付けは行っております。
ご自身でお持ちの紋つき着物や、安く宅配レンタルした紋つき着物など、着付けにお困りの場合は、是非お越しください。
紋付き着物は、それだけ格が高い着物のため、扱いも小紋着物と変わってきます。だからこそ不安なことは必ず店舗へ行く前に確認するのをおすすめいたします。