お宮参りで赤ちゃんに着せる着物のことを、「産着(うぶぎ)」といいます。
今回の記事は、「産着のことをまだ全然知らない……」という人のために、“産着とは何なのか?”が分かるように情報をまとめました。
といった疑問がある人は、まずはこの記事で産着の基本情報を入手してみてください。
産着とは、お宮参りの際に赤ちゃんが初めて身に付ける晴れ着のことを指します。
産着は「一つ身」「初着」「熨斗目(のしめ)」「掛着」「祝着」などとも呼ばれ、「赤ちゃんが健やかに育ちますように」という願いが込められています。
赤ちゃん自身は白羽二重などの内着を着て、その上から綺麗な着物を羽織ることが、お宮参りの正装とされています。
昔、医療技術がまだ発達していなかった日本では、生まれてすぐに命を落としてしまう赤ちゃんが少なくありませんでした。そしてそのことを、悪霊や鬼に取り憑かれたせいだと考えたのです。
そこで、産後間もない赤ちゃんにはボロを着せ、悪霊や鬼に目を付けられないようにしておき、お宮参りで初めて綺麗な服を着せるようになりました。
こうした昔の慣わしが、現在の“お宮参りで産着を着せる習慣”に繋がっているといわれています。
産着には、夏用の「絽(ろ)」と呼ばれる種類もあります。
絽は、たて糸とよこ糸の本数を減らして生地の密度を粗くすることで、風通しをよくした涼しい産着のことで、暑い時期のお宮参りに向きます。
しかし近年は考え方が柔軟になり、そもそも酷暑の時期を避けてお宮参りを行うことが増えているので、夏生まれの赤ちゃんが必ず絽を選ぶということはありません。
お宮参りとは、生まれた場所を守ってくださる神様に赤ちゃんが誕生したことを報告して、「健やかに成長しますように」とお祈りをする慣習です。
「初宮詣(はつみやもうで)」あるいは「初宮参り(はつみやまいり)」と呼ばれることもあります。
お宮参りに行くタイミングは、男の子が生後31~32日・女の子が生後32~33日が伝統的です。
しかし近年は、赤ちゃんとママの体調や季節、仕事の都合などを考慮して、あくまで生後1ヶ月を基準として、お宮参りの日取りを自由に決めるご家族が増えてきています。
お宮参りの日取りを後ろにずらして、生後100日のお祝い(お食い初め)と一緒にするケースもあるようです。
ちなみに、お宮参り時の赤ちゃんの服装に厳密なルールはなく、必ずしも産着を着る必要はありません。赤ちゃん、そしてママの体調を1番に考慮して、衣装は軽く済ませることも1つの方法です。
男の子用の産着は、「強くたくましく育ってほしい」という願いを込めて、鷹や兜、龍などの力強い柄がよく選ばれます。
色は、黒・紺・白・緑・青などが人気です。
<男の子の産着で人気の柄>
産着の「鷹」の柄には、鋭い眼光で物事の本質を見通し、鋭い爪で1度掴んだ幸運を離さないという意味があります。
また、権威の象徴である「鷹狩り」にちなみ、男の子の出世・大成を願う意味もあるようです。
産着の「兜」の柄には、兜で頭を守る=邪気や災難から男の子を守るという意味が込められています。
「兜の豪華な飾り」は高い権威の象徴でもあり、一家の長として、男の子の立派な成長を願う意味も持ちます。
古来中国ではすべての生き物の祖とされる「龍」の柄には、男の子が強くたくましく育つという意味が込められています。
特に「昇り龍」には、天を昇る龍のように、男の子の出世・飛躍を願う意味もあるようです。
辰年(たつどし)生まれの男の子には、縁起がいいとして特に人気があります。
産着の「鯉」の柄、特に「鯉昇り」の柄には、「急流(=人生の試練や苦難)を乗り越えて、男の子が出世・飛躍してほしい」という願いが込められています。
産着の「虎」の柄には、「虎のように力強くたくましい男の子に育ってほしい」という願いが込められています。
「宝船」とは米俵や金銀、珊瑚などの宝物を積んだ帆掛け船のことです。
これが産着に描かれている場合、新たな門出を祝す意味合いを持ちます。また、宝船のたくさんの積み荷から、「一生ものに困らないように」という意味もあるようです。
産着の「軍配」の柄には、軍配を持つ人にふさわしく「知力・決断力・行動力に溢れた男の子に育ってほしい」という願いが込められています。
また、人生の岐路において進むべき道を迷わないで、「きちんと導きがありますように」という意味の願いもあるようです。
女の子用の産着は、「美しく優しく育ってほしい」という願いを込めて、桜や牡丹、鞠(まり)など華やかな柄がよく選ばれます。
色は、赤・ピンク・黄色・白などが人気です。
<女の子の産着で人気の柄>
「桜」は日本の国花であり、五穀豊穣の神が宿っているという縁起の良い木です。
よって、桜の柄の産着を選ぶことは、女の子の人生の始まりにとって縁起の良いこととされています。
また、桜がいっせいに咲き誇る姿から、人生の華やかさ・豊かさも意味しているようです。
日本には昔から「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合の花」という言葉があります。これらの花は花弁が大きく多いため、高貴さ・端麗さなどの美しさをイメージさせます。
産着においても「牡丹」や「芍薬」は、「奥ゆかしくも美しく、凛とした女性に育ちますように」という願いを持つようになりました。
「御所車(ごしょぐるま)」とは、皇族・貴族の乗り物だった牛車のことです。
このことから、御所車の柄の産着には、「玉の輿に乗れますように」という願いが込められるようになりました。
「花車」は、花をたくさん飾った御所車のことです。女の子が周囲から祝福されながら、美しく成長することを願う気持ちが込められています。
産着の「鞠(まり)」の柄には、「何事も丸くおさまりますように」「丸々と健康に成長しますように」「円満な家庭を築けますように」といった願いが込められています。
また、貴族の遊びだった「蹴鞠(けまり)」のイメージから、高貴さや気品さを備えることも祈っているといいます。
「鈴」の音には、獣や魔物を追い払い、縁起の良いものを引き寄せる力があると信じられています。
そして「この子をよろしくお願いいたします」という願いを、神様に届けてくれるという意味合いがあるようです。
産着の「鶴」の柄には、「赤ちゃんが長生きしますように」「将来良縁に恵まれますように」といった願いが込められています。
1度つがいになった鶴は、一生離れることなく連れ添う特性があるため、「良縁」のイメージを持つようになりました。結婚式の白無垢にもよく選ばれる柄です。
お宮参りで産着を着る際に、扇子やでんでん太鼓など、様々な小物をあわせることがあります。
産着の柄と同じく小物にも、赤ちゃんの成長や幸せを願う気持ちが込められています。
<産着とあわせる代表的な小物の種類>
「扇子」は、末広がりの形状をしていることから、別名「末広」と呼ばれる縁起の良い小物です。
「赤ちゃんのこれからの人生が“末広がり(次第に繁栄する)”になりますように」との、願いが込められています。
お宮参りの扇子には赤ちゃんの名前と生年月日を書いて、のし袋に入れて白い麻の紐で結びます。
この白い麻紐には、「髪が白くなるまで長生きできますように」という意味合いがあります。
「でんでん太鼓」は両面で音が鳴り、丸い形状をしています。
このことから、「裏表がない素直な子に育ちますように」「角のない穏やかな子に成長しますように」といった願いを込めるようになりました。
また、太鼓を鳴らす音は邪気・悪霊を祓ってくれると考えられていて、お参り後は赤ちゃんの部屋に飾っておく人もいます。
「犬張子(いぬはりこ)」とは、犬の形をした紙製の置物のことです。
子犬は丈夫で健やかに育つことから、「赤ちゃんが丈夫に育ちますように」という願いを込めるようになりました。
また、子どもが数え年で3歳になるまでの災難を、犬張子が身代わりになって引き受けてくれるともいわれています。
そのため犬張子は、七五三の3歳のお参り時に、神社に奉納するかお焚き上げをしてもらうことが一般的です。
「お守り袋」は、お宮参りで神社に参拝した際に授与されるお守りを入れるための袋です。
男の子は白い房、女の子は赤い房のお守り袋を選ぶことが一般的です。
お守り袋には、縁起の良い柄が刺繍されていることが多く、特に多いのは「長寿」を意味する鶴の柄です。
産着は大人の着物のように、着付けが必要なものではありません。
写真を見るとイメージしやすいですが、抱っこされた赤ちゃんに覆いかぶせるようにして着用します。抱っこしている人の背中で、産着の紐を蝶結びして固定しているのです。
産着を、(抱っこしている人が)1人で着せることはできません。手伝ってくれる人と事前に手順を確認して、できれば前日までに練習もしておきましょう。
以下では、産着の着せ方の手順とポイントを説明します。
産着と下着の襦袢を重ねます。襦袢がよれないように、綺麗に重ねることがポイントです。
産着と襦袢の紐を両側の袖に通します。
右側の紐は右袖に、左側の紐は左袖にそれぞれ内側から通して、背中の部分がしわにならないよう広げて、形を整えます。
背中部分を外側に向け、赤ちゃんを産着で包むように覆いかぶせます。
着物の柄にしわが寄らないように、整えながらかぶせましょう。
赤ちゃんの顔が見えて、かつ赤ちゃんが苦しくない位置で産着を調整し、抱っこしている人の背中で紐を蝶結びにします。
お守り袋などを通す際は、背中で蝶結びをする前に、紐に通しておきましょう。
本来、赤ちゃんは産着の下に白羽二重(しろはぶたえ)と呼ばれる、真っ白な絹で作られた内着を着用します。
しかし近年は、赤ちゃんの負担を軽減する考えから、普段着でも使うロンパースやカバーオール、ベビードレスなどを着用することも増えてきたようです。
あんまり汚れているのはいけませんが、「これを着なくてはいけない」という厳密なルールはないので、好きに選びましょう。
お宮参りに行く時期の赤ちゃんは、まだ体温調節が苦手なので、夏場のお宮参りでは注意してあげるべきことがいくつかあります。
まずは、産着の下を涼しくしてあげることです。夏用のベビーロンパースなど、できるだけ軽装にして、赤ちゃんの負担を減らしてあげます。
産着を着せる時間をなるべく短くしてあげることも大事です。また、ポータブルの扇風機を持っていくとよいでしょう。
そして産着ですが、涼しく着られるように工夫ができます。産着は通常、着物と襦袢が2枚重ねになっているので、夏場は襦袢を外して着物のみで着用すると、比較的涼しく着用できるのです。
レンタルの場合、襦袢を外してもよいかはお店によるので、「外して着せたい」という人は事前に確認しておきましょう。
結論から言うと、産着は誰が買っても構いません。
昔からの慣習に従うなら、母方の実家が購入することになりますが、時代と共にその慣習に対する意識も薄れてきました。
一般的な傾向ですが、産着を買う人は慣習通りの母方の実家が4割、父方の実家が4割、若夫婦(ママ・パパ)が2割という割合です。
お宮参りには、産着だけでなく他にも色々な費用がかかるので、誰がどの費用を負担するか双方の実家と相談してうまく割り振ることが理想的です。
詳細は産着は誰が買う?お宮参りの費用や産着のその後とあわせて解説をお読みください。
産着を購入するのにかかる費用の目安は、2万円~20万円です。
着物のブランド、生地や刺繍の質などによって、金額はかなり変わってきます。
近年は「いい着物を安く着せたい」という需要から、産着レンタルの利用が急増しています。
産着レンタルの費用の目安は、1万円~2万円です。
以上、「産着とは何なのか?」を知りたい人に向けた、産着の基本情報をお伝えしました。
「お宮参りの準備は想像以上に大変そうだ……」と感じた人もいるかもしれません。
確かにそうですが、1つ1つ前もって準備すれば難しいことはありませんし、無事に産着を着せてお宮参りができると、やはりとてもいい想い出になります。
ぜひしっかりと情報収集をして、赤ちゃんの幸せを願う産着を選んであげてくださいね。
当店、京都のレンタル着物『咲く都』では、産着の着物だけではなく「帽子・よだれ掛け・お守り袋」を一式セットでレンタルすることができます。
お得でお宮参りの準備が楽になる「お宮参り産着プラン」をぜひチェックしてみてください。